南向きの窓とガラス選びで快適な暮らしをつくるパッシブデザイン 茨木市|自然素材|注文住宅|工務店

こんばんは。自然素材の注文住宅を建てる茨木市の工務店、エッグ住まいる工房の長野です。

今週は、現在設計打ち合わせ進行中のお施主様のサッシの検討をしました。
南向きのサッシは、ガラスの選び方次第で住まいの快適さが変わります。

今回の敷地は、ほぼ南側に間口が広く配置されており、かつ南側に光を妨げる要素がありません。パッシブデザインを行うには最適な条件です。

パッシブデザインとは、エアコンなどの機械に頼らず、太陽の光・熱・風など自然の力を活かす設計手法のことです。古くからの日本家屋も、実はパッシブ的な考えで軒が深くなっています。

暑い夏は太陽の南中高度が高く、深い軒が日射を遮蔽し、寒い冬は南中高度が低いため軒が深くても太陽の熱が家の中まで入り、温めてくれる。先人の知恵ですね。

パッシブハウスについてはこちらに少し詳しく説明しているのでよろしければぜひご覧ください。

ガラスの種類と特徴を比較し、快適性を高める

さて本題に入りますが、南に面した吹き抜けに3つ設置する、幅74cm・高さ200cmのサッシにつけるガラスの検討です。ガラスには、大きく2種類あります。

  1. 遮蔽型(遮熱型)Low-Eガラス:夏の強い日差しを反射し、室内が暑くなるのを防ぎます。関西圏では、一般的にこちらのガラスが使用されます。
  2. 熱取得型(断熱型)Low-Eガラス:冬の太陽熱を積極的に取り込み、室内の暖かさを保ちます。一般的には、日照時間の短い北の地域で使用されます。

これを見ると、夏は遮蔽型、冬は熱取得型にしたくなりますが、季節ごとにガラスを取り換えることはできません。つまり、冬は熱取得型で太陽の恵みをいただき、夏はガラス以外のもので日射を遮蔽する方法の検討が重要となります。

今回はサッシのすぐ上に、奥行60cmの庇も設置しました。これにより、夏至の日射は完全に遮ることができます。

日射シミュレーションで裏付けるパッシブ設計

しかし、パッシブはそう簡単ではありません。庇による日射遮蔽が一番有効になるのは、南中高度が一番高い6月21日(夏至)ですが、まだ夏真っ盛りではありません。一番暑いのは8月初旬ごろです。

また、太陽は一日の間に大きく向き、角度が変わります。庇だけでは完全に遮ることは不可能です。

そこで今回は「ホームズ君省エネエキスパート」というソフトを使用して、日射熱シミュレーションを行いました。サッシの位置・大きさ・庇の寸法を入力し、年間・月ごとの一日平均の日射熱を室内に取得するエネルギーを、遮蔽型と熱取得型それぞれで比較しました。その結果、熱取得型にした場合の方が、年間を通してお得という結果になりました。

自然素材の家だからこそ相性の良いガラス選びを

自然素材の家は、「呼吸する家」「調湿する家」とも言われます。
断熱性能が高く、蓄熱性のある素材(漆喰、無垢材、セルロースファイバーなど)と相性が良いのは、熱取得型ガラスです。

南向きの窓は、ただ大きくすればよいというわけではなく、ガラスの選び方も設計と一体です。
私たちはプランニングの中で、窓の位置、庇の長さ、ガラスの種類まで丁寧に設計します。

自然素材の家だからこそ、自然の力をどう取り入れるか!
それが「設計者の腕の見せどころ」です。

この記事を書いた人

長野 孝彦

エッグ住まいる工房 代表取締役社長/設計担当 現在エッグ住まいる工房で建てる新築のお住まい全ての設計を担当している建築士。建築業界に携わり30余年、累計300棟以上の住まいづくりに関わってきた。デザイン、機能性、メンテナンス性、そしてお施主様のリクエスト。それらをバランスよく取り入れて暮らし方を提案することを得意としている。

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