長く価値を保つ家とは?減価する家としない家

①「建てた瞬間から価値が下がる」という常識を疑う

さて、日本中の多くの人が、家は建てた瞬間から価値が下がるものだと思い込んでいます。
確かに、日本の中古住宅市場では築年数が経つほど査定価格が下がり、30年も経てば土地にしか価値が残らないケースがほとんどです。

しかし、それは家そのものが悪いからではありません。
高度経済成長期以降、家を「消費財」として扱ってきたこの国の社会構造に原因があります。

欧米では、築100年を超える住宅が現役で使われている現状があり、むしろ「古いこと」が価値として評価されます。
メンテナンスを重ねて住み継ぐことが文化として根付いているのです。

つまり、減価する家と減価しない家の違いは、
設計や素材の良し悪しだけではなく、「家をどう扱うか」という意識の差にあります。

建てたあとの暮らしの中で、小さな傷を味わいとして受け止め、定期的に手を入れながら大切に使う人のもとでは家の価値はどんどん育ちます。

一方で、便利さや見た目だけを重視し、古くなれば「買い替えるもの」として扱えばどんなに高性能な家でもすぐに価値を失ってしまいます。

建てる工務店側と住まい手側の両者ともが、「家に対してどう向き合い、どう育てていくか」という意識を持っているかが大切になります。

② なぜ日本の家は“資産”になりにくいのか

日本では、家を「一代限りの消費財」として扱う傾向があります。
新築で買った家も、築30年を過ぎると解体して建て替えることも視野に入ってきます。
また、売却時には「古家付き土地」として評価され、建物そのものの価値はほとんど残らず、購入者が決まれば解体させることも珍しくありません。

これは、建てる段階で“長く使う”という発想が薄いこと、
そしてメンテナンスやリフォーム文化が根づいていないことが大きな要因です。

一方で、ヨーロッパや北米では、住宅は「資産」として次世代へ引き継ぐ前提で建てられます。
築100年を超える家でも、丁寧に修繕され、今なお現役で使われているのです。

つまり、ヨーロッパや北米の「家」の概念は、現在の日本のように30年で建て替えが必要な、短命に終わる家ではなく、「長く使い続けることを前提」に設計された家のことを言います。

建てて終わりではなく“住みながら育てながら価値を重ねていく”という考え方が、日本の住宅にもこれから必要とされています。

③ 長く価値を保つ家の条件① “素材の価値”が落ちない

素材は、家の価値を左右する最も重要な要素です。

無垢の木は、時間が経つほどに色合いが深まり、漆喰の壁は、年月を経ても呼吸しながら室内環境を整え続けます。
これらは劣化ではなく、「経年変化」や「経年美化」と呼ぶにふさわしい変化です。

一方で、化学的な建材はどうでしょうか。
新築時は美しく見えても、紫外線や湿気で表面が傷み、数十年後には張り替えが必要になります。

つまり、“新しさ”ではなく“素材の本質”こそが、資産価値を守る鍵なのです。

エッグ住まいる工房では、漆喰・無垢の床・セルロースファイバーなどの自然素材を中心に据えた住まいづくりを行っています。
それらはメンテナンスが容易であり、素材の力で湿度をコントロールし、時間とともに風合いを増すものです。

長く価値を保つためには、「素材そのものが長寿命か」を見極めることも大切です。

④ 減価しない家の条件② “構造”と“メンテナンス性”

どれほど素材が良くても、構造が弱ければ価値は保てません
目に見えない部分こそ、資産としての耐久性を決定づけます。

構造材の乾燥精度、通気計画、基礎の仕上げ、これらはすべて、見えないところに積み重ねられる“職人の誠実さ”です。

また、長く価値を保つ家には、メンテナンスしやすい設計が求められます。
例えば、外壁の塗り替えや点検が容易にできる構造であること。
配管や配線が交換しやすいこと。
これらの工夫が将来の維持コストを大きく左右します。

私たちは、建てて終わりではなく、
定期点検やアフターサポートを通じて“資産としての家”を守ります。
その姿勢こそが、減価しない家のもうひとつの条件です。

⑤ 減価しない家の条件③ “デザインが流行に左右されない”

デザインの流行は10年単位で変わります。
けれども、資産として残る家は流行を追いません。

無垢材の床や漆喰の壁は、どんなインテリアとも自然に調和し、住む人のライフステージが変わっても違和感を感じさせません。

それは“普遍的な美しさ”があるからです。

外観も同じです。
奇抜さや派手さを追うのではなく、素材と比例する落ち着いた佇まいが、年月を経ても価値を感じさせます。

長く価値を保つ家には、「時間を味方にするデザイン哲学」が息づいています。

流行に左右されないこと。
それが、長く価値を保つ家のもう一つの大切な条件です。

⑥家を支えるのは「素材」と「関係性」

長く価値を保つ家とは、素材・構造・デザイン、そしてそれを支える人との関係性が揃ってこそ成り立つものです。

どれほど良い家を建てても、
定期的な点検や修繕を怠れば、価値は少しずつ失われます。

だからこそ、私たちは“建てた後のパートナー”であり続けます。
お客様の暮らしと共に、家の価値を守り、育てていく。

それがエッグ住まいる工房の考える「長く価値を保つ家」です。

自然素材が時とともに美しく変化し、家族の思い出が重なりながら、さらに深みを増していく。

資産とは、数字で表せる価値だけではありません。
そこに流れる時間と、手をかけてきた愛情があってこそ、本当の資産として未来へ受け継がれるのだと感じています。





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この記事を書いた人

竹澤 貫

エッグ住まいる工房 取締役副社長/営業・広報担当 大手ハウスメーカー、中規模ビルダーの営業経験を経て、エッグ住まいる工房で「笑顔を作る住まいづくり」についてお客様に発信をし続けている。 パソコン・Web関係に強く、Instagramの公式アカウントでは毎週金曜日に失敗しない住宅計画についてライブ配信を行っている。

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