吹き抜けについて解説。上下階の温度差を考える

1.吹き抜けのメリットとデメリット

吹き抜けは空間の広がりを生んだり、部屋に光を落としたりと数多くのメリットがあります。
反面、費用がかかることや、リビングの音が寝室に届いてしまうなど、明確なデメリットもある空間設計。

そんな中、お客様から最も質問の多いポイント、「上下階の寒暖差」について、少し深掘りしてお話してみようと思います。

皆さん初めまして
茨木市にある自然素材の注文住宅を建てる工務店
エッグ住まいる工房 竹澤貫 と申します

2.そもそもの部屋の温度差とヒートショック

さて、これまでアパートやマンションにお住まいだった方にとって、ワンフロアの生活は当然温度差がないはずです。とはいえ冬場になるとひんやりする部屋もきっとあることでしょう。そう。扉を閉めた先の、洗面所、お風呂、トイレ、玄関、寝室などのことです。
こうして改めて並べると、ひんやりする部屋がとても多く「温度差がない」とは言えないかもしれないですね。

 ▶部屋の温度差を考える

結局扉の向こうは寒いという前提のもとですが、暖房をつけて普段過ごしているLDKから寝る時に寝室のある2階に上がると当然のように
「とても寒い」
ということが起こります。
この室温差というのは非常に危なく、ヒートショックという最悪死に至る疾患の原因になるものです。

 ▶ヒートショック

今では聞いたことのある方が随分増えたヒートショックという「急な温度差で血圧が乱高下することによっておこる心臓や血管に起こる疾患」の原因。ヒートショックの関連死は、年間19,000人にものぼります。

家の断熱にこだわっていないお住まいの場合、この温度差は10℃~11℃ほどにもなると言われており、18℃のLDKを出て浴室に入る時7℃になっていると言われれば、その寒さは想像するのも難しいことではないと思います。

3.吹き抜けで熱が逃げる

さて、少し話を戻します。
この記事をご覧の皆様の多くは
「吹き抜けを付けると熱が逃げてしまい、冬場寒いのではないか」
「光熱費が多くかかってしまうのではないか」

ということを気にされて、吹き抜けを付けるか否か迷いたどり着いていると推察します。

先に結論を申し上げると「吹き抜けを付けると熱は逃げて冷えるし、空間が広くなる分光熱費は高くなる可能性があります」

これはもうそういうものです。例えば、エアコンを付けたらLDKだけを暖めたい。その場合は吹き抜けは付けない方がいいですし、階段の前にも必ず扉をつけましょう。階段からも熱はどんどん逃げます。

4.吹き抜けを付ける意味

吹き抜けは室温のことを考えると二面性のある設計です。

空間が繋がってしまうので、熱が逃げる。という考え方。
空間が繋がることで、熱を循環させられる。という考え方。


結果は同じことですが、熱に対する考え方ひとつでプラスにもマイナスにもなります。

重要なのは家の環境や室温に対して、「どんな暮らしを目指しているのか」という理想形を理解して、そのことについて設計士に相談してアドバイスを受けることです。
2.でお話したような「家じゅうの温度差があまりない家の方がいい」という考え方の場合吹き抜けはとてもいい空間設計であるのに対し、「普段通り抜けるだけのホールや、生活するわけではない吹き抜け部分を暖めるのがもったいない」という考え方の場合、あまり推奨できません。

5.部屋を暖める。家を暖める。

近年では全室床暖房や全館空調などが流行していることからもわかるように「室温差をなくすことの重要性」に目を向けられている昨今です。
吹き抜けはその部分を、大きな床暖房などの設備を使うのでなく、換えの利きやすいエアコンで叶えられる点は大きなメリットと言えるかもしれません。
みなさんにとって暖めたい空間が部屋なのか、家なのかによってお住まいの作り方は変わります。吹き抜けのありなし。に目を向けるのではなく、何のために吹き抜けを作るのか?に目を向けて見て欲しいなと思います。

6.大前提。熱の逃げない家を建てること

最後になりますが、このお話の大前提は「家の断熱性能が高い、高断熱住宅になっていること」です。これとても大切。

家全体を暖めるために吹き抜けを作りました。
✕ 断熱性能が低い家の場合
家じゅうに広がった暖かい空気が、家中のそこかしこから逃げてしまうためいつまでたっても暖まらない
〇 断熱性能が高い家の場合
家じゅうに広がった暖かい空気は、家の外に逃げ出さないため家全体を均一に緩やかに暖めることができる

こうした大きな違いが生まれます。
断熱については別記事でも説明していますが、少し難しい話なので、是非担当者の方にお話しを聞いてみるようにしてください。
【高断熱について知ろう】

この記事を書いた人

竹澤 貫
竹澤 貫
エッグ住まいる工房 取締役副社長/営業・広報担当
大手ハウスメーカー、中規模ビルダーの営業経験を経て、エッグ住まいる工房で「笑顔を作る住まいづくり」についてお客様に発信をし続けている。
パソコン・Web関係に強く、Instagramの公式アカウントでは毎週金曜日に失敗しない住宅計画についてライブ配信を行っている。