受け継がれる手のちから―大工道具館を訪れて

みなさん、こんばんは。自然素材の注文住宅を建てる茨木市の工務店、エッグ住まいる工房の代表であり、設計も担当しております長野です。

先日、日ごろから弊社の家づくりを支えてくださっている職人さんや協力業者さんの団体「エッグ住まいる会」の皆さんと一緒に、神戸にある「竹中大工道具館」へ研修を兼ねて見学に行ってきました。
静かな緑に囲まれた建物の中で、日本の大工文化の奥深さにじっくりと触れることができました。

受け継がれる日本の大工道具たち

館内には、鉋(かんな)や鑿(のみ)、鋸(のこぎり)など、昔ながらの大工道具がずらりと並んでいます。どれも丁寧に使い込まれていて、まるで職人さんの息づかいが今も残っているようでした。驚いたのは、何百年も前の道具が、今もほとんど形を変えずに使われていること。私が社会人になりたての頃からよく使っていた「墨壷」もそのひとつです。墨のついた糸をはじいて木材にまっすぐな線を引くこの道具。とても単純な仕組みですが、なんと千年以上前からあるそうです。

先人の知恵と美意識

機械も電気もない時代。これほど正確で実用的な道具を作り上げた先人の知恵と工夫には本当に驚かされます。木という自然素材と真剣に向き合い、試行錯誤を重ねながら、手の感覚だけで美しい建物をつくってきた。その姿勢には、「便利さ」よりも「美しく、永く、心地よく」という想いがあったのだと思います。

自然素材の住まいづくりに通じる想い

私たちが自然素材を使って住まいづくりをしているのも、まさにその想いの延長線上にあります。木や漆喰といった自然素材は手間がかかります。しかしその分、住む人にやさしく、年月とともに味わいを増していく素材です。便利なものがあふれる今だからこそ、変わらずに良いとされる“本質”を大切にしたい。――見学を通して、改めてそう感じました。

職人の誇りと技を支える心

そして何より、現場で腕をふるう職人さんたちの誇りや情熱を、あらためて強く感じた一日でもありました。住まいづくりは図面だけでは完成しません。設計の想いを形にするのは、道具を手にした職人さんたちの技と心です。
古くからの道具が今も現役で使われているように、本当に良い住まいもまた、時を経ても価値を失わないもの。そんな住まいを、これからも皆さまと一緒につくっていけたら嬉しく思います。

この記事を書いた人

長野 孝彦

エッグ住まいる工房 代表取締役社長/設計担当 現在エッグ住まいる工房で建てる新築のお住まい全ての設計を担当している建築士。建築業界に携わり30余年、累計300棟以上の住まいづくりに関わってきた。デザイン、機能性、メンテナンス性、そしてお施主様のリクエスト。それらをバランスよく取り入れて暮らし方を提案することを得意としている。

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