シロアリが家にとってどれだけ怖いか?防蟻性能の大切さを説明します。

みなさんこんばんは
茨木市で自然素材の注文住宅を建てる工務店
エッグ住まいる工房 竹澤貫 と申します。

『構造見学会で見るべきポイント』シリーズ、全6部作。いよいよ今回で5作目となりました。今回のテーマは<防蟻性能>。つまり【シロアリ】がテーマです。
今日はこの【シロアリ】について、その生態のことにも触れながら家を長持ちさせるために必要な知識として、できるだけわかりやすく説明していきます。

それでは参りましょう。

以前アップした『構造見学会で見るべきポイント』の記事では、幅広く耐震や断熱などについてお話していますので、よろしければぜひそちらもご覧ください。

https://www.egg-jp.com/staff_blog/staff_blog-22271/

家の天敵 【シロアリ】の生態にふれる

はじまって早々に「虫の生態に迫りましょう」と言われ、この時点で虫がニガテな方にソッ…と閉じられてしまいそうなのでちゃんと前置きをしておきます。虫の写真は出てきません。どうぞ安心して続きをご覧ください。

今回の主役ともいえる生き物【シロアリ】。そんな【シロアリ】が家の天敵であることは世界各地でずっと言われてきていることなので、この記事をご覧の皆さんも「シロアリが家に出ると良くない」ということはご存じのことかと思います。そのあたりをもう少し掘り下げてみましょう。

 ― 日本に生息する代表的な3種のシロアリ

まずはこの日本に生息する【シロアリ】の種類から触れてみましょう。ここで取り上げるのは「住宅の被害を引き起こす【シロアリ】」だけです。そうでないシロアリも多くいますが、今日はスルー。

ではこちらをご覧ください。

ヤマトシロアリイエシロアリアメリカカンザイシロアリ
被害全体の92%被害全体の8%被害全体の0.3%
巣に数万~十数万匹巣に数十万~数百万匹巣に数百~数万匹
朽ち木や腐った木
湿った木材を好む
朽ち木や腐った木
湿った木材を好む
湿った木材だけでなく、乾材(カンザイ)、つまり乾燥した木材も食べる
餌場=巣 になるため、朽ち木に生息する
食べつくすと群れで拠点を移動する
土中に固定した巣を作る
拠点を中心として、一定範囲の木を広く餌場にする
餌場=巣 になるため、木全般に生息する
食べつくすと群れで拠点を移動する
4月~5月に群れで飛ぶ6月~7月に群れで飛ぶ6月~7月に群れで飛ぶ

国土交通省<シロアリ被害実態調査報告書>(2013年)
https://www.i-ecoup.com/wp-content/uploads/2015/11/shiroarireport.pdf

日本で活動が活発・かつ住宅への被害が嘆かれているのはこの3種。
全国的な被害があるのは1つ目の「ヤマトシロアリ」。

現在イエシロアリは主に関東の一部地域のみが発生箇所とされており、アメリカカンザイシロアリについては「生態が特殊でヤバイ」けど、今まだ被害件数が多くないので一部界隈だけが「ヤバイ」と言っている状況です。

そんな特殊なアメリカカンザイシロアリを除く2種で共通しているのは

「朽ち木や腐った木。湿った木材を好む。」という点。

実際にリフォーム工事などで【シロアリ】の被害が発生する場所として最も多いのは、昔ながらのタイル貼りで作られたタイプの浴室回り。タイルのヒビなどが原因で水が染み出し、浴室の周りの木材を湿らせる。結果、そこが【シロアリ】にとって格好の餌場となってしまうわけです。

 ―特殊な生態。アメリカカンザイシロアリ

前項で「生態が特殊でヤバイ」と触れた種類、アメリカカンザイシロアリ。
名前の通り外来種であるこの【シロアリ】が「特殊」とされるには2つの理由があります。

1つは「乾燥した木でもおかまいなしに食べる」ということ。これまでの「木がちゃんと乾燥していれば食害に遭うことはない」という常識をひっくり返しました。

2つ目に「巣に生息する数が他の【シロアリ】よりめちゃくちゃ少ない」ということ。
「少ないならいいんじゃないの?」
と思うかもしれませんが、そうではありません。

「少ないけど家の柱の中に【シロアリ】が巣を作ってじわじわ食べてる」

ということは、被害が発生してから発覚するまでにかなりの時間がかかるということを指します。入り込まれてから3年・5年後に「ん?これはなんだ?」と気付く。
そのため今現在も「どれぐらい日本で被害が拡大しているかまだ分かってない」という恐さがあるわけです。

 ―【シロアリ】。飛来

【シロアリ】は飛びます。
実はこの【シロアリ】という生き物は、正確にはアリではありません。カテゴリ上はゴキブリに近い生き物です。

そんな【シロアリ】は餌場を変えたり、新しい女王の環境を整えるために群れで一斉に飛び立つタイミングがあります。
それが4月~7月の期間。
最も数の多いヤマトシロアリは例年ほぼゴールデンウィークの時期に飛びます。

「家の基礎に羽アリが何匹かいるんですけど(泣」

新築したばかりの家でもそういう連絡を受けるケースはあります。
それは「近くどこかの【シロアリ】の巣から飛び立ってちょうどいい木を探してうろうろしている状態」です。ちゃんと対策されていれば大丈夫なので心配いりませんが、不安になるのもうなずける。そんな一場面でした。

3種類のシロアリ対策

気付けば前置きの【シロアリ】説明だけでずいぶんなボリュームになりましたが、ここからは【シロアリ】の対策。<防蟻性能(ぼうぎせいのう)>のお話にいきましょう。

昔からこの【シロアリ】による被害というのはずっと嘆かれているものです。そのため、当然昔も今も、この【シロアリ】への対策は家を建てるうえで欠かせないものになりました。もちろんその方法は年々進化してますけどね。
ではここからは今各社が取り組んでいる実際の【シロアリ】対策。防蟻方法について見ていきましょう。

 ―①殺虫剤散布

まずは昔ながらの防蟻として取り扱われているのが、この「殺虫剤散布」という方法です。
建物の床下、木材、地面を対象に、広くシロアリを駆除することのできる薬剤を散布します。

かつてこの薬剤は「10年に一度再散布が必要」なものが使われていました。
しかし、その後年々環境配慮・健康配慮の視点が進むようになり、「人体への影響が強い薬剤は使わない」流れが生まれていきました。時期の一つの目安は2003年に改正された建築基準法による「シックハウス対策」が転機のようです。

こうして、あまり強すぎる薬剤は使わないようになり、「5年に一度再散布が必要」なものに変わるようになりました。

メリットやデメリット
◎薬剤散布を取り扱う会社が多く、散布1回ごとの値段を抑えられる。
△5年に一度の再散布を一生続けなければならない。
△健康面への心配をする方には不向き。

 ―②物理的な侵入防止

続いてこちらはある意味シンプルな「物理的に【シロアリ】の侵入を妨害する」という方法です。こちらが取り入れられ始めたのは割と近年のお話。その細かな方法自体は様々ありますが、いくつか例を並べてみます。

基礎の立ち上がりに金属メッシュや金網を設置することで通れなくする方法。
床下に忌避性のある薬剤(殺虫ではない)が塗布されたシートを貼り、寄せ付けないようにする方法。
防蟻パッキンを取り付けすることで入り込めないようにする方法。
などなど

メリットやデメリット
◎薬剤を使わないため健康上のリスクがない
◎シールドの劣化サイクルを考えると薬剤散布よりも長持ちする
△量産しているわけではないため単価が高く、高価になりやすい
△「メッシュに【シロアリ】が通れる隙間があった。」など、<防蟻性能>を担保するためには工事の品質次第なため技量がかなり問われる。

 ―③ホウ酸防蟻

最後にご紹介するのは「ホウ酸」を【シロアリ】対策に活用するという方法です。
「ホウ酸」というのは人体には害のないものですが、虫が接種すると分解することができず死んでしまうという性質があります。そんなホウ酸を木材に塗布することで防蟻するのが、この「ホウ酸防蟻」。
近年少しずつ採用する企業が増えつつあるものの、全体のおよそ3%ほどしかまだ取り扱っていないものです。
なお、弊社エッグ住まいる工房では、このホウ酸防蟻を採用しています。

メリットとデメリット
◎一度塗布すると一生再塗布の必要が無いため、ランニングコストがかからない
 (効果がなくなってしまっていないかの点検は必要)
◎人体への影響がないため健康面で安心
△量産しているわけではないため単価が高く、高価になりやすい

構造見学会で【シロアリ】から守らなければならない場所を見る

実はこの【シロアリ】対策。意識する方と意識しない方がかなり両極端だったりします。
もちろん家を建てる人は皆さん「当然気にする」とは答えますが、その中でも

実家が古い一戸建てだった方

これに限っては相当説明を真剣に聞かれる傾向にあります。
結構我が事としてとらえるのだと思います。



「耐震なんてどこも頑丈に作ってるから一緒でしょ」と言う方が最近は減ってきました。各住宅会社毎にこの耐震への取り組み方、考え方が様々なのだと知っていただけていることを強く感じます。

今日のテーマ<防蟻性能>。これも、「どの会社で建ててもシロアリ対策なんてちゃんとやってるでしょ?」ではありません。なぜその対策をしているのか?先々のランニングコストはどうなのか?保証の有無は?
絶対に確認しておくべきことの一つです。

構造見学会ではそんなシロアリ対策について、実際の建物を見ながら確認することができます。是
ご予約は下記イベントフォームで受付中。
ご来場心よりお待ちしております。

この記事を書いた人

竹澤 貫

エッグ住まいる工房 取締役副社長/営業・広報担当 大手ハウスメーカー、中規模ビルダーの営業経験を経て、エッグ住まいる工房で「笑顔を作る住まいづくり」についてお客様に発信をし続けている。 パソコン・Web関係に強く、Instagramの公式アカウントでは毎週金曜日に失敗しない住宅計画についてライブ配信を行っている。

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